コラム

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2016.06.01
真珠


 6月になりましたね。6月の誕生石も幾つかありますが、今回は真珠について書いてみます。
 真珠が貝の体内で生成される宝石だというのは知っている方も多いかと思います。3月のコラムで取り上げた珊瑚も同様ですが、生物が生成する鉱物は生体鉱物(バイオミネラル)と呼ばれます。真珠の場合は、小石や寄生虫などの異物が貝の体内に侵入したとき、外套膜が偶然一緒に入りこむことで天然真珠を生成します。外套膜とは軟体生物にみられる背側で内臓を覆う体壁です。表皮から炭酸カルシウムを分泌して貝殻を作り出す器官です。なので、真珠の成分は貝殻と等しいものとなり、貝殻を作る軟体動物であれば真珠を生成する可能性があります。外套膜は細胞分裂して袋状になり、真珠を生成する真珠袋をつくります。その中でカルシウムの結晶(アラレ石)と有機質(主にタンパク質コンキオリン)が交互に積層した結果真珠層が形成されて、真珠が生成されます。この有機質とアラレ石の薄層構造が干渉色を生み出し、真珠特有の虹色(オリエント効果)が生じるそうです。生命の神秘ですね。
 
 真珠は、天然での産出は稀ですが加工が容易で、「月のしずく」「人魚の涙」とも呼ばれているほどの美しい光沢に富むため、世界各地で古くから宝石として珍重されてきました。またその希少性から薬としての効能を期待し、服用される例がしばしば見られます。日本でも解熱剤として使用され、現在も漢方薬として販売されています。また、化粧品等にも使われていますね。私も真珠エキス入のパックを使用したことがあります。
エジプトでは紀元前3200年頃から既に知られていたと言われています。クレオパトラが酢に溶かして飲んでいたと伝えられていますが、宝飾品や薬として珍重されるようになったのは後の時代とのこと。世界の他の地域でも中国で紀元前2300年頃、ペルシャで紀元前7世紀頃、ローマでは紀元前3世紀頃から真珠が用いられていたという記録があるそうです。
 日本は古くから、真珠の産地として有名でした。日本書紀や古事記、万葉集にはすでに真珠の記述が見られることからも、少なくとも当時の知識人の間では真珠が知られていたことがわかります。『魏志倭人伝』にも邪馬台国の台与が曹魏に白珠(真珠)5000粒を送ったことが記されています。万葉集には真珠を詠み込んだ歌が56首含まれており、当時、真珠はあこや、しらたま、鰒玉(ふくぎょく)などと呼ばれていたそうです。ちなみに、当時は三重県の英虞湾や愛媛県の宇和海でアコヤ貝から採取されていましたが、日本以外で採れる真珠に比べ小粒だったとのこと。しかし、日本の真珠の美しさはヨーロッパまで伝えられたそうです。
 先に、天然の産出は稀だと書きましたが、真珠の養殖に初めて成功したのはなんと日本だそうです。日本の養殖真珠の方法とは球体に削った核を、アコヤ貝の体内に外套膜と一緒に挿入し真珠層を形成させるという方法です。核の材質に特に定めはないそうですが、ミシシッピ河流域に生息する二枚貝を用いることが多いようですね。また、アコヤ貝の真珠が真珠層を形成しているのに対し、巻き貝から生成されるコンク真珠やメロ真珠は真珠層を持っていません。そのためアコヤ貝の真珠と区別されることがあるそうです。
 
 宝石としての真珠は、冠婚葬祭のいずれの場面でも使える便利な装飾品です。女性なら、冠婚葬祭用に真珠のネックレスを持っている方も多いですよね。私もいつかは真珠のネックレスを購入したいものです。しかし、取り扱いには少々注意が必要で、炭酸カルシウムが成分であるため汗が付いたまま放置すると真珠特有の光沢が失われてしまいます。なので、使用後に柔らかい布で拭くなどの手入れが大切だそうです。酸や他の化学物質に弱い特性なので、食事の汗だけではなく化粧品のスプレーや食事時のドレッシングなども注意しなければいけませんね。
 
 次回、7月の誕生石はルビーです。ルビーにはどんな歴史があるのでしょうか。調べるのが楽しみです。
(コラム*カワセミ)

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