コラム
2014.03.15
マールス
2014年も早くも三ヶ月目となりましたね。3月になり、学校を卒業したり職場の移動があったりと新生活の準備に入っている方も多いのではないでしょうか。
3月は英語でMarchといいますが、この語源がどこから来ているか知っていますか?これは、ローマ神話のマールス(マルスなどの呼び方もありますが、今回はマールスに統一したいと思います)の月を意味するMartius(マルティウス)が元となっています。マールスは、ローマ神話の神様の一人です。今回は、3月の由来にもなっているローマ神話の神マールスについて書いてみたいと思います。
マールスは、ローマ神話における戦と農耕の神で、ギリシア神話のアレースと同一視されている神です。先にギリシア神話とローマ神話の関係を簡単に説明させて貰えば、ギリシア神話がローマに翻訳されて入ってきた際に、ローマ人は既存のローマの神々をギリシア神話の神々に当てはめました。ここで、もともと存在していたローマ神話とギリシア神話が融合されたのです。
マールスと同一視されるアレースの神話にはいい話がなく、粗雑な乱暴者として神々に嫌われているのに対し、マールスの神話は勇敢な戦士、青年の理想像として慕われています。主神(社や祠に祭られた複数の神のうち主なる神で、主祭神。ここから転じて多神教などにおける神々の中でも最高の神。最高神)並みに崇拝された重要な神として描かれています。ギリシア神話とローマ神話は全くの同一ではないのでこのような違いも現れるのです。ルーヴル美術館には「ボルゲーゼのアレス(英語版)」という彫刻があります。これは美術分野でデッサンによく使われる石膏像に取り上げられているような有名な作品ですが、本来ならアレースであるところを「マルス」と呼ばれて親しまれているそうです。ここからもマールスが慕われていることが分かりますね。
以前の学説では、ローマ人が農耕民族だったのでマールスも元々は農耕神で、勇敢に戦い領地を増やしたロームルス王と重ねられたことで、軍神としても祭られるようになったと考えられた説がありました。しかし、現在では、インド・ヨーロッパ語族比較神話学が進歩したことにより、マールスは元より軍神であったと考えられているそうです。
また、マールスは天体の火星(マーズ)とも同一視されています。スペイン語では火曜日をmartes(マルテース)と呼びますが、本来は「軍神マルスの日」を意味する語であり、ここでも扱いは農耕神というよりは軍神に重きを置かれているように思えます。
はじめに書いたように、3月はマールスの月とされています。3月は気候がよくなり軍隊を動かす季節や農耕の始まる時期であり、当時のローマ暦の新年は3月から始まっていました。一年の始まりの月の神としてマールスが置かれたことからも、マールスが慕われていた神だということ読み取れるかと思います。このように、主神と同様に扱われ、更にローマ建設者とされる初代ロームルス王の父親という伝承まで残されています。神が祖先にあたるという点は日本の天皇にも通ずるところがあるかもしれません。
さて、今回はローマ神話の軍神マールスについて書いてみましたがいかがでしたでしょうか。ローマ・ギリシア神話にはたくさんの神が存在し、神話もたくさんあります。機会があればそちらもぜひ調べてみてくださいね。
2014年3月15日 10:00 AM | カテゴリー: コラム